2023-03-22
付録・浪曲特選・《婦系図》(天津ひずる)
午後0時30分から、浅草木馬亭で浪曲を聴く。出演者は、東家一太郎(「矢作の鎌腹」)、玉川奈々福(「放蕩一代」)、澤順子(「蝶々夫人」)、浜乃一舟(「男の花道」)天津ひずる(「婦系図」)という面々であったが、なかでも天津ひずるの「名調子」は見事であった。御存知、湯島境内の場から1年後の話。病魔に冒されたお蔦の病状は悪化の一途、面倒を見る惣助夫婦の計らいと説得で、「真砂町の先生」も改心、早瀬主税を静岡から呼び寄せたが、時すでに遅し、お蔦の臨終には間に合わなかった、という愁嘆場である。口演の天津ひずるは、その状景・叙情を「淡々と」、しかも迫真の「技」で描出する。浪曲の真髄は、一声、二節、三セリフと思われるが、声は清らかに澄みわたり、細やかな節回しも絶妙、セリフは、聞いただけで、その個性的な人物像が浮き彫りされる、といった按配で、文字通り「三拍子揃った」、天下一品の出来映えであった、と私は思う。芸名から察するに、彼女の師は天津羽衣か・・・。風貌は、堂々として貫禄十分、芸風はどこまでも艶っぽく、なんとも魅力的な舞台姿であった。木馬亭の2階は木馬館、大衆演劇のメッカで、日にち毎日「芝居を観に来る」客でごった返しているが、打って変わって、こちらは「静閑」そのもの、「浪曲を聴きに来る」(落ち着き払った)客筋との違いが際だつという風情で、まことに興味深い。まさに「観ると聴くは大違い」ということだろう。日頃は、十数名の客数だが、今日は百名近くが来場、それでも「深閑」とした、いつもの空気が毀されることはなかった。感謝。(2012.2.4)
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