META NAME="ROBOTS" CONTENT="NOINDEX,NOFOLLOW,NOARCHIVE" 脱「テレビ」宣言・大衆演劇への誘い 劇団暁
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2023-10-17

劇団素描・「劇団暁」・《芝居「子別れ傘」「甚太郎草子」の舞台模様》

【劇団暁】(座長・三咲夏樹、三咲春樹)〈平成26年4月公演・小岩湯宴ランド〉
この劇団の舞台は初見聞である。昼の部、芝居の外題は「子別れ傘」。筋書きは、大衆演劇の定番。7年前、飢饉に苦しんでいた村を救うため、心ならずも蔵破りの罪を犯して島送りとなった三造(座長・三咲春樹)が、女房、子どもに「一目会いたい」と島抜けをして帰って来た。しかし、家には誰の人影もなく、叔母(三咲さつき)の家を訪ねてみれば、恋女房・千草(座長・三咲夏樹)は、「二度の亭主」を持った由、一粒種の三吉(三咲憧?)も新しい父親を「ちゃん」と慕っている様子で、三造の帰る場所はなかった。村では「三造塚」も建てられ、すでに死者として祭られていたのである。まさに「世は無常(無情)」、どうしようもない「やるせなさ」を座長・三咲春樹は、精一杯、懸命に描出しようとしていた、と私は思う。また、千草を演じた座長・三咲夏樹の「女形」の風情も絶品、「あなたが島で死んだと聞き、三吉のために二度の亭主を持ちました」という釈明にも、ことのほか説得力があった。加えて、二度目の亭主(飛竜貴)は十手持ち、本来なら、三造を捕縛しなければならない立場だが、「早くお逃げなせえ、三造塚あたりが手薄・・・」と暗示して解放する。折からの降雨を知るや、一粒種の三吉に「傘」と酒を持たせ、「いいか三吉、あのおじちゃんにお前の顔をよーく見てもらえ、そしてお前もおじちゃんの顔をよーく見てくるんだぞ」といった「温情」が滲み出て、たいそう見応えのある舞台模様であった。しかし、筋書きは、あくまでも「不条理」、三造は「三造塚」まで逃げ延びたが、そこで追ってきたヤクザと切り結び、憤死する、という結末で幕は下りた。兄弟座長を筆頭に、役者ひとりひとりが誠実に舞台を務めようとする態度が清々しかった。夜の部、芝居の外題は「甚太郎草子」。この演目も大衆演劇の定番。百姓を嫌ってヤクザに憧れ村を出て行った甚太郎(座長・三咲春樹)、後悔して「堅気になろう」と改心、村に帰り叔父(三咲さつき)のもとで暮らし始めた。叔父には一人娘(三咲愛羅)がいたが、早くも甚太郎に焦がれた様子、「おとっつあん、あたし甚太郎さんのお嫁さんになりたい」、「そうか、お前も年頃だ。いくつになった?」「12歳・・」、野良仕事から帰ってきた甚太郎、叔父からの祝言話を聞かされて、一人娘の顔をまじまじと見つめ、「そうですかい、私のお嫁さんになりたい・・、でも同じ顔の人間がまた一人増えるだけだ」、といったやりとりが何とも可笑しかった。言うまでもなく、三咲愛羅は三咲春樹の愛娘、親子で祝言をあげるなんて、といった「楽屋ネタ」で、この芝居は展開する。やがて、股旅姿の長脇差し(座長・三咲夏樹)が颯爽と登場、甚太郎に(ヤクザ時代の)「おとしまえ」をつけに来たのだが、堅気姿の甚太郎を見て刃を交わすことはあきらめたか・・・。真の仇役は三枚目・蝮の権九郎親分(飛竜貴)、キティちゃんの衣装に身を固め、一人娘に「言い寄る」がケンモホロロ、子分たち(三咲大樹、三咲暁人、三咲章人?)に「力づく」で拉致させたものの、救出にきた甚太郎と助っ人の長脇差しに(あえなく)成敗されて舞台は大団円となった。昼の部と違ってこの芝居は喜劇。ここでも座員一同は「大きく脱線することなく」それぞれの役割を誠実に果たしていた。この劇団の根城は野州・船生かぶき村、初代座長・三咲てつやが20年前(平成6年)に築いた「芝居茶屋」である。今回は、その若手兄弟座長が、一家連中を引き連れての出張公演という趣で、兄座長・三咲夏樹の長男・暁人、次男・隼人、三男・龍人、四男・鷹人、長女・舞花、弟座長・三咲春樹の長男・憧、長女・愛羅、次女・良羅、といった「花形」「子役」の面々が、賑々しく舞台を彩る。舞踊ショーで見せた、兄座長(三咲夏樹)の「女形」は絶品だが、その長男・暁人の舞姿もすこぶる魅力的で、「女形」はもとより「立ち役」でも、えもいわれぬ「色香」を漂わせていた。将来が楽しみな逸材である、と私は思った。閉演後、売り出された初代座長・三咲てつやの著書「桟敷は皆んなの楽天地」(三咲プロダクション・平成25年)を購入、《前口上》を開けば、その一節に「文法が未熟で、然も文章が幼稚。その上、構成は滅茶苦茶の、この拙い本を読んでいる皆さんは災難です。でも、折角買って頂いた本ですので最後まで読んでくださいね」とある。加えて、本の帯が表紙から裏表紙にかけて「刷り込まれている」といった代物で、まさに至れりつくせり、著者の謙虚・誠実な姿勢に脱帽する他はなかった。なるほど、さればこそ今日の舞台は、初代座長・三咲てつやの薫陶の賜であったことを心底から納得、大きな元気を頂いて帰路に就くことができたのであった。感謝。
愛燦燦愛燦燦
(2007/08/22)
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2023-10-16

劇団素描・「劇団暁」・特別公演《劇団総出演》の舞台模様

【劇団暁】(座長・三咲夏樹、三咲春樹)〈平成26年4月公演・小岩湯宴ランド〉
本日は「特別公演・劇団総出演」ということで、初代座長・三咲てつや、その妻女で副座長・ふぶき梨花、二代目座長・三咲きよ美、その娘・三咲梨奈、三咲あやめらが来演していた。芝居の外題は、昼の部「梅川忠兵衛」、夜の部「兄と妹」(と張り出されていたが、実は「父と娘」では?)。「梅川忠兵衛」の舞台は、途中からの見聞となったが、忠兵衛に弟座長・三咲春樹、梅川に兄座長・三咲夏樹、八右衛門に二代目座長・三咲きよ美、孫右衛門に初代座長・三咲てつや、といった配役で、江戸時代の悲恋模様を「精一杯」描出していたと思う。森進一の名曲「それは恋」を背景に、新口村に辿り着いた二人の景色は「絵巻物」のように鮮やかであった。第二部の歌謡・舞踊ショーでは、副座長・ふぶき梨花が登場、「木曽路の女」他の見事な歌声を披露した。また、二代目座長・三咲きよ美と愛娘・三咲梨奈の相舞踊「夫婦春秋」の歌声は初代座長・三咲てつや、三者の呼吸もピッタリと合って、見事な出来映えであった。とりわけ、母に似てやや太め、三咲梨奈の舞姿は「愛くるしく」、たいそう魅力的であった。夜の部の芝居「父と娘」の筋書きは、大衆演劇の定番。娘・お志津(三咲あやめ)が手籠めにされそうになったとき、助けようとして相手を殺してしまった父(初代座長・三咲てつや)、島送りとなって七年・・・、将軍様にお世継ぎが誕生、慶事の「御赦免」となって戻れば、お志津は所帯持ち、亭主の大工・三五郎(二代目座長・三咲きよ美)との間には長男・庄太(抱き人形)まで生まれていた。父、ひとまず安堵したが、娘の相手はどんな男だろうか、「不安」はかくせない。訪れた大家(三咲さつき)にそれとなく尋ねるが、大家はお志津に懇願されて「事実」を伝えられない。大家、それはもう「飲む・打つ・買う」の三道楽でと言いかけては、全部、自分の亭主にしてしまう、(父娘との)「絡み」の風情は絶品であった。しかし、「事実」はやがて露見する。博打の借金をとりたてられ、酒浸りになりながら、家の金を持ち出そうとする三五郎の姿を目にして、父は諫言するが三五郎は逆上、出刃包丁まで取り出す始末、父の堪忍袋の緒は切れ、三五郎に斬りかかった。お志津、この修羅場を見て泣きじゃくる庄太を父の前に差し出し、「おとっつあん、この子のためにも止めてちょうだい」。われにかえった父、庄太を抱きしめ、三五郎に渡す。三五郎、庄太を腕にしてどうしていいかわからない。「高い高いをしてあげて!べろべろばーをしてあげて!」仕草で訴えるお志津の必死な姿を見て、三五郎、やむなく(ぎこちなく)「高い高い」をすれば、庄太の泣き声は笑い声に変わった。この瞬間から、舞台は、三五郎「改心の場」へと回る。まさに「子はかすがい」(子は宝)の《眼目》が見事に結実した名舞台であった、と私は思う。閉幕後、二代目座長・三咲きよ美の口上でいわく「以前、この芝居をやっていたら、腰の曲がったお婆さんが舞台に上がってきて、私のおでこをゴツンと殴りました。今でも、おでこが痛くなるんです。でも、三五郎は本当は「やさしい」「いい人」なんです」。おっしゃるとおり、初代座長、著書でいわく「桟敷は皆んなの楽天地」、この世に「悪い人」など、いないのである。
 夜の部・舞踊ショー、副座長・ふぶき梨花の個人舞踊は「車屋さん」、その艶姿を見聞できたことは、望外の幸せであった。感謝。
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2023-10-15

劇団素描・「劇団暁」・《座長誕生日公演・芝居「弁天小僧」の舞台模様》

【劇団暁】(座長・三咲夏樹。三咲春樹)〈平成26年4月公演・小岩湯宴ランド〉
本日は「座長誕生日公演」とやらで、客席は賑々しく、前半分の指定席は、劇団の「ご贔屓筋」で埋め尽くされていた。芝居の外題は「弁天小僧」。幕が開くと、そこは稻瀬川勢揃いの場、白浪五人男が「それぞれに名を名乗る」ところが始まった。中でも、弁天小僧(座長・三咲夏樹)の景色は「格別」で、以後の展開が大いに期待されたのだが・・・。この芝居を「喜劇風」に演出することほどむずかしいことはない。私はこれまで、「劇団花凜」「劇団たつみ演劇BOX」「橘小竜丸劇団」「鹿島順一劇団」の舞台を見聞しているが、無理矢理「喜劇仕立て」にすることなく、ただ淡々と「筋書き通り」に演じる方が成功するようである。なぜなら、「弁天小僧」の《眼目》は「変化の妙」、艶やかな女形の風情が、一瞬にして〈ふだん着慣れし振袖から髷も島田に由井ヶ浜、打ち込む浪にしっぽりと女に化けた美人局、油断のならぬ小娘も小袋坂に身の破れ、悪い浮名も竜の口土の牢へも二度三度、だんだん越える鳥居数、八幡様の氏子にて鎌倉無宿と肩書も、島に育ってその名さえ、弁天小僧菊之助〉とうそぶく、「白浪」(盗賊)に変貌する、しかし、〈盗みはすれど非道はせず、人に情を掛川から金谷をかけて宿々で、義賊と噂高札に廻る配附の盥越し〉といった賊徒の一味であることを描出できるかどうかの「一点」に絞られるからである。今日の舞台は、残念ながら「脇役」が、「喜劇仕立て」にこだわりすぎ、本来の《眼目》とは無縁の結果に終わったように思う。仇役の親分(座長・三咲春樹)が、サングラスをかけ「洋風」のパフォーマンスを精一杯「熱演」していたが、常連客は「白ける一方」で、喫煙室では「こんなのは弁天小僧じゃないよ」「めちゃくちゃ」「早く終わりにしないか!」などという寸評が飛び交っていた。しかし、指定席の「御贔屓筋」はヒートアップして大喜び、その「対照の妙」が、私にはたいそう面白かった。今日は座長の「誕生日公演」、羽目を外した「舞台模様」も一興と感じる(御贔屓筋へのサービスとして許容する)ことができるかどうか。(小岩の)常連客の(今後の)動向を見聞することも、私には「一興」である。
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2023-05-03

劇団素描・「劇団暁」・《芝居「大阪しぐれ」の舞台模様》

【劇団暁】(座長・三咲夏樹、春樹)〈平成27年3月公演・小岩湯宴ランド〉
 芝居の外題は「大阪しぐれ」。この芝居の中身は鹿島順一劇団の「噂の女」、劇団春陽座の「お千代物語」、劇団翔龍の「追われる女」、近江飛龍劇団の「女の一生」とほぼ同じである。弟(三咲暁人)の病気を治すため、苦界に身を沈めたお千代(座長・三咲夏樹)が、十五年ぶりに帰郷した。母(三咲さつき)と幼友達のクニやん(座長・三咲春樹)は大いに喜んだが、村人たちは庄屋を筆頭に拒絶する。弟夫婦(嫁・三咲愛羅?)もその空気を察して、姉に「早く、この家から出て行ってくれ、そうしないと村八分にされてしまう」と言い放った。お千代は、もとより長居する気はない。手土産も投げ返されて、返ろうとするとき、嫁の兄(三咲大樹)登場。「いやあ、困った。知人の保証人になったばっかりに20両の借金ができてしまった。何とかならないだろうか」と思案する。母も弟夫婦も貧乏百姓でそのような大金を工面できようはずもない。嫁の兄「では、しょうがない、妹のお花を女郎に売るほかはない」と言いながら退場しようとするのを、お千代が止めた。「待って下さい。20両ならここにあります。どうぞ役立ててください。お花ちゃんを私のようにしてはいけません」。嫁の兄、「ありがとう」とそのお金を伏し頂いて退場したが、それは芝居、弟夫妻を改心させるための狂言だった。大詰めはクニやんも登場して、めでたくお千代と大阪へ旅立つ、といった筋書きである。この芝居の眼目は、女郎、売笑婦を「穢らわしい」と差別する「選民意識」をものともせずに、果敢に底辺を生き抜こうとする『賤民意識』のたくましさ、温もり、美しさの描出にある。したがって、主役はあくまでもクニやん、彼の縦横無尽、破天荒な言動の中に潜む「純情」とお千代の「慈愛」が、舞台の景色として結実しなければならない。本日の舞台、それぞれの役者が真摯に「精一杯」、役割を務めていたが、相互の呼吸が今ひとつ「噛み合わない」。いずれも「棒立ち」の景色で「セリフ」に頼りがちな風情に終わったことは、まことに残念である。わずかに、弟の嫁を演じた三咲愛羅(?)のアッケラカンとした態度・表情は光っていたのだが・・・。物語は「悲劇」だが、それを吹き飛ばす「笑劇」をめざしてもらいたい。観客は、抱腹絶倒しながら、心中では涙を流すのである。今後の精進に期待したい。
北の宿から/大阪しぐれ北の宿から/大阪しぐれ
(2003/11/19)
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2023-04-30

劇団素描・「劇団暁」・《芝居「奥様仁義」・配役の妙と三咲暁人の「魅力」》

【劇団暁】(座長・三咲夏樹・春樹)〈平成27年3月公演・小岩湯宴ランド〉
芝居の外題は「奥様仁義」。私はこの芝居を、以前「市川千太郎劇団」の舞台で見聞しているが、今日の出来映えは「いずれ菖蒲か杜若」、この劇団ならではの魅力が随所に散りばめられていた。幕が開くと、そこは居酒屋の店先か、土地の親分(三咲大樹)が百姓姿の兄(三咲龍人?・夏樹座長の三男)に絡んでいる。「前々からお前の妹(三咲憧・春樹座長の長男)に惚れている。オレの女になるよう説得しろ」。それを聞いて、客席が笑い出した。見れば、兄も妹もまだ(おそらく)○○○。親分「何が可笑しい!」といきり立って、客席をにらみつける。その一瞬で、舞台と客席の「呼吸」がピタリと合った。兄、「それでは妹に聞いてみましょう、お前どうする、親分の女になるか、そうか、嫌か、親分、妹は嫌と言っております」、親分、その様子を見て「まだ、妹は何もいっていないじゃねえか」と言ったやりとりは定番、「そうですか、ではもう一度」と言って確かめれば、妹「嫌です、気持ち悪い、ダイッキライ!」。親分、もうこれまでと連れ去ろうとしたが、すかさず菅笠が飛来、現れたのは旅姿の女侠客(座長・三咲春樹)、「やめないか」と言うなり、親分の腕をねじ上げ、顔面に一発平手打ち、そのピシャリという音が客席後方まで届く。親分「アイタ-、芝居なんだからもう少し手加減してくれよ」とぼやきながら逃げ去った。その顛末を見ていたのが呉服屋大店の女主人(三咲さつき)と若旦那(座長・三咲夏樹)。若旦那は見るからに「つっころばし」、そのなよなよとした風情がたまらなく魅力的であった。女侠客を惚れ惚れと見つめながら「おっかさん、あの方を嫁にしたい。」呆れかえる女主人に「もし一緒になれなければ、首を吊って死にます」だと。女主人、しぶしぶ女侠客と交渉、何度も追い返されるが、若旦那の気持ちは変わらない。かくて、女侠客は、めでたく呉服屋大店の「若奥様」に収まった。そこにやって来たのが百姓姿の兄妹、応対したのが一番番頭(三咲暁人)。兄曰く「母は大病で明日をも知れぬ命、妹の花嫁姿を一目見て死にたいと言います。花嫁衣装を買いに来ました」番頭「花嫁衣装なら揃っていますよ、どれにしますか」と言いながら三着ほど用意した。妹、お気に入りの一着を指させば、兄「値段はいかほど?」「ハイ、二十両です」「私たちは貧乏人、少しまけてくれませんか」「いいでしょう、いくらに?」「・・・二分に!」、それを聞いて番頭、ずっこけながら怒り出す。「冷やかしなら止めてください、私は忙しいんだ」。その騒ぎを聞きつけて若奥様登場。「どうしたんだい?」兄妹の話を聞いて、三着すべてを無償提供、見舞金10両まで手渡した。おさまらないのは番頭、女主人を呼び出して訴える。「こんなことをしていたらお店の身上はつぶれます!」女主人も同意して、若奥様を追い出そうとしたが、そこに若旦那登場。「いいではないですか、人助けをすれば、お店の評判もあがります」。女主人、あきれて「いいえ許しません。姑去りを申しつけます」「それでは私も出て行きます!」と言われて「そんなことはできない。もう勝手にするがよい」と諦めた。その場は一件落着となったが、おさまらないのが若奥様、退場しようとする若旦那に一言「番頭に話がありますのでお先に」。その一言を聞いて、番頭は恐怖の極致、その固まった風情が「絵になっていた」。「よくもベラベラと告げ口をして」というなり、竹刀を持ち出し番頭を追いかけ回す。番頭は客席を逃げ回って楽屋裏に引っ込んだが、激しい衝撃音と悲鳴が聞こえてくる。やがて番頭、ぼこぼこに打擲された様子で、ヨロヨロと登場、またもや女主人に訴えるという繰り返しは、抱腹絶倒場面の連続であった。以後は、仕返しにやって来た冒頭の親分一味を成敗して、若奥様は旅に出る、その後を若旦那が追いかけ、なぜか女主人までも追いかける、その様子を番頭が呆然・憮然として見送るうちに幕となったが、客席には「美味しい料理を食べ終わった」ような満足感が、いつまでも漂っていた。以上の舞台模様を総括すれば、その魅力を支えているのは、一に配役の妙、二に客席との呼吸、三に脇役の存在ということになるだろう。中でも、夏樹座長の長男・三咲暁人の「実力」は、半端ではない。表情、所作、歯切れのよい口跡、一挙一動の全てが観客を惹きつける。登場しただけでオーラが漂う役者として、今後の成長が楽しみである。その昔(昭和40年代)、浅草木馬館には「観音温泉・踊りの先生」と呼ばれる女性客がいた。常連としてあまた多くの舞台を見聞したであろう彼女は、いつも一言「コドモが一番うまいや!」と呟いていた。その言葉を思い出しながら、今日もまた大きな元気を頂いて、岩盤浴に向かった次第である。感謝。
浅草木馬館日記浅草木馬館日記
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