2023-09-29
劇団素描・「劇団KAZUMA]・《芝居「月夜の旅鴉」》
【劇団KAZXUMA】(座長・藤美一馬)〈平成20年6月公演・横浜三吉演芸場〉
入場料を払おうとすると、玄関ロビーはいつもと違い、外国人の若者で「ごった返していた。今日は込んでいるのかなと一瞬思ったが、さにあらず、彼らはカナダからの大学生で総勢約20名、教授とおぼしき中年女性が引率して見学に来た模様、一般客も約20名。芝居の外題は「月夜の旅鴉」、筋書きは定番、賭場荒らしの仲間から「足抜け」して(堅気になり)親孝行(の真似事)をしようとした弟分・翫八(仲間に斬殺された)のために、その兄貴分・市川の新三郎(座長・藤美一馬)が金を届ける話。目立った役者は、座長の他には、翫八の父親役・行徳の仁平(冴刃竜也)、賭場荒らしの頭領・八丁嵐の権九郎(大槻海斗)、新三郎の父(芸名不詳・瑞季彪雅?)ぐらいであったが、きちっとした(楷書的な)演出で、さわやかな印象を与える舞台であった。
座長の口上によれば、7月は大阪、8月は和歌山だが、9月は浅草木馬館、10月は十条篠原演芸場での公演が決まっているとのこと、だとすれば「人気」「実力」ともに「水準」以上の劇団であることが窺われる。座長の舞台姿は、細身のため「立ち役」ではあまり輝かない。(津川竜に似ている)コミカルな二枚目、女形の方が向いているのではないか。しかし、脇役が揃っており、幅の広い、中身の濃い芝居が期待できるのではないかと思った。「華の新歌舞ショー」では、藤美真の助、藤美京介の歌唱が「お見事」、林愛次郎の女形舞踊も「水準」以上であったと思う。
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入場料を払おうとすると、玄関ロビーはいつもと違い、外国人の若者で「ごった返していた。今日は込んでいるのかなと一瞬思ったが、さにあらず、彼らはカナダからの大学生で総勢約20名、教授とおぼしき中年女性が引率して見学に来た模様、一般客も約20名。芝居の外題は「月夜の旅鴉」、筋書きは定番、賭場荒らしの仲間から「足抜け」して(堅気になり)親孝行(の真似事)をしようとした弟分・翫八(仲間に斬殺された)のために、その兄貴分・市川の新三郎(座長・藤美一馬)が金を届ける話。目立った役者は、座長の他には、翫八の父親役・行徳の仁平(冴刃竜也)、賭場荒らしの頭領・八丁嵐の権九郎(大槻海斗)、新三郎の父(芸名不詳・瑞季彪雅?)ぐらいであったが、きちっとした(楷書的な)演出で、さわやかな印象を与える舞台であった。
座長の口上によれば、7月は大阪、8月は和歌山だが、9月は浅草木馬館、10月は十条篠原演芸場での公演が決まっているとのこと、だとすれば「人気」「実力」ともに「水準」以上の劇団であることが窺われる。座長の舞台姿は、細身のため「立ち役」ではあまり輝かない。(津川竜に似ている)コミカルな二枚目、女形の方が向いているのではないか。しかし、脇役が揃っており、幅の広い、中身の濃い芝居が期待できるのではないかと思った。「華の新歌舞ショー」では、藤美真の助、藤美京介の歌唱が「お見事」、林愛次郎の女形舞踊も「水準」以上であったと思う。
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2023-09-25
劇団素描・「劇団KAZUMA]・《芝居「ヤクザ雄呂血」》
【劇団KAZUMA】(座長・藤美一馬)〈平成20年9月公演・浅草木馬館〉
この劇団は6月、横浜三吉演芸場で見聞済み、2回目の観劇である。芝居の外題は「ヤクザ雄呂血」。新作、しかも今回初めて舞台にかける「野心作」のようだったが、何とも「長丁場」の芝居であった。座長自身、口上で「長いお芝居で、しかもクライお芝居で、どうなることかと思いました。わかりにくい場面があったと思います。もっと勉強したいと思います」と話していたが、たしかに、わかったようなわからないような、もう芝居は終わっているような、いないような、という感じで、「いささか疲れた」というのが、偽らざる感想である。市川雷蔵主演の映画を題材にしているとか、といっても、筋書は定番、親分から一家の跡目と娘を託された代貸し(座長)が、弟分に騙されて、その地位も娘も失って絶望する。「義理」や「人情」というけれど、所詮、人間は色と欲の「餓鬼道」を歩く他はないというニヒリズムを漂わせる。映画の雷蔵は200人斬りまくったそうで、舞台の座長も斬った、斬った、葦やススキの陰から三人ずつ、次々と登場するヤクザものを50人ぐらいは倒したに違いない。最後は「殺陣」も忘れ気味とのこと、まさに「野心的」「迫真の」演技ではあった。ただ、義理や掟、色や欲に縛られて生きることの「むなしさ」、ただ一つ「純粋な愛」だけが救いではないか、というようなテーマが貫かれていたのかどうか、私にははっきりしなかった。従来の定番に、何かを「加味したい」(そのために長丁場になった)という誠実さ・意欲は評価したい。
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この劇団は6月、横浜三吉演芸場で見聞済み、2回目の観劇である。芝居の外題は「ヤクザ雄呂血」。新作、しかも今回初めて舞台にかける「野心作」のようだったが、何とも「長丁場」の芝居であった。座長自身、口上で「長いお芝居で、しかもクライお芝居で、どうなることかと思いました。わかりにくい場面があったと思います。もっと勉強したいと思います」と話していたが、たしかに、わかったようなわからないような、もう芝居は終わっているような、いないような、という感じで、「いささか疲れた」というのが、偽らざる感想である。市川雷蔵主演の映画を題材にしているとか、といっても、筋書は定番、親分から一家の跡目と娘を託された代貸し(座長)が、弟分に騙されて、その地位も娘も失って絶望する。「義理」や「人情」というけれど、所詮、人間は色と欲の「餓鬼道」を歩く他はないというニヒリズムを漂わせる。映画の雷蔵は200人斬りまくったそうで、舞台の座長も斬った、斬った、葦やススキの陰から三人ずつ、次々と登場するヤクザものを50人ぐらいは倒したに違いない。最後は「殺陣」も忘れ気味とのこと、まさに「野心的」「迫真の」演技ではあった。ただ、義理や掟、色や欲に縛られて生きることの「むなしさ」、ただ一つ「純粋な愛」だけが救いではないか、というようなテーマが貫かれていたのかどうか、私にははっきりしなかった。従来の定番に、何かを「加味したい」(そのために長丁場になった)という誠実さ・意欲は評価したい。
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