META NAME="ROBOTS" CONTENT="NOINDEX,NOFOLLOW,NOARCHIVE" 脱「テレビ」宣言・大衆演劇への誘い 劇団素描・「紅劇団」・《芝居「芸者の里」の名舞台》
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2023-07-02

劇団素描・「紅劇団」・《芝居「芸者の里」の名舞台》

【紅劇団】(総座長・紅大介)〈平成27年9月公演・みのりの湯柏健康センター〉
 昼の部、芝居の外題は「影の光」。ある飯場で働く土方の「義兄弟」譚である。兄貴分の新吉(同魂会会長・紅あきら)は、仕事は人の二、三倍働けるが、酒好き、博打好き、女好きで「日にち毎日」二日酔い状態だが、親方(後見・見城たかし)の娘・お艶(紅ちあき?)から慕われている。弟分の留吉(座長・紅大介)は見るからに三枚目(藤山寛美もどき)で頼りないが、これまでこつこつと働いて貯めた大金・300万円を腹巻きの中に秘めている。また、お艶に惚れ込んでおり、今日も今日とて「プレゼント」(紙袋)を抱え、プロポーズにやって来た。お艶に袋の中身を訊かれ「化粧品や。あんたの肌は荒れておる。これを使ってきれいになんなはれ」「へええ、いくらしたの?」「八個で8千円や」「ナーーンだ。私はいつも一個で8千円のものを使っているんや」「ふーん、それにしては皺だらけや」といった楽屋ネタで笑わせる。詰まるところ、「チューして!」などと追い回し、思い切り振られてしまった。代わって、新吉登場。留吉が300万円、貯めていることに驚いたが、相好を崩して「3万円貸して!」と頼む姿は天下一品、たまらなく魅力的であった。舞台は一転、百姓の五郎(座長・紅秀吉)、お種(紅美咲?)の若夫婦が思案に暮れている。五郎「町内会費280万円を紛失してしまった。死んで詫びるほかはない。淀川に飛び込むので、後はよろしく頼む」と言えば、お種「あんたが死ぬなら、あたしも死ぬ!」その様子を見ていた新吉、「大変だ!助けなければ。でも命は救えても、おれは280万円など持っていない・・・」そこにふらふらとやって来た留吉を見つけると、「おい、大変だ!あの若夫婦が心中しようとしている。280万円なくしたそうや。お前の300万円で助けてやれ」「・・・・」とまどう留吉に向かって「金なら、なくなってもまた作れる。命はなくなったらもう取り戻せないんやぞ」と説得する。かくて、新吉、若夫婦を助け、この美談は新聞記事にもなったが、留吉のことについてはⅠ行も書かれていない。飯場の仲間たちが新吉を褒めそやす様子を見て、我慢できなかった。「そんなもん、嘘っぱちや」と新聞紙を破り捨てた。親方も登場して留吉の振る舞いを責め立てたが、真相を知っているのは新吉一人、一同に打ち明けて、舞台は大詰めへ・・・。「おれが悪かった。お前とは義兄弟、詫びる証に何でも望みを叶えてやる。遠慮しないで言ってくれ!」留吉、欣然として「そうか!ほんならお艶ちゃんをオレに譲ってくれ!」。思わず絶句、苦渋に満ちた新吉が「そればかりは、叶えられない」。「やっぱりな!」、いいんだ、いいんだ言ってみただけやがな・・・、という思いを込めて、「これからは、兄貴を頼らず、一本立ちせなあかんのや」と新天地に旅立つ留吉の姿は、凜々しく輝いて見えた。この舞台、親子で「義兄弟」を演じる絶妙の「呼吸」の中に、所々「楽屋ネタ」も散りばめられて、文字通り「浪速の人情芝居」の面白さを十分に堪能できた次第である。夜の部、芝居の外題は「芸者の里」。昼の部とは打って変わって、侍が登場する「人情悲劇」であった。主人公は芸者・梅千代(総座長・紅大介)、どこか気品のある若者・新さん(座長・紅秀吉)とは恋仲・・・。家では新さんが、今か今かと梅千代の帰りを待っている。やっと帰って来ると、楽しい四方山話が始まった。「新さん、私、このごろ酸っぱいものが食べたくなった」「じゃあ、夏みかんでも買ってこようか」「そうじゃない、見るものも見なくなったの」「芝居でも観にいこうか」「違う、できちゃったのよ」といったやりとりの定番で客を笑わせる。「そうか、ヤヤができたのか。それはよかった。これからは、私もしっかりとがんばるよ」という様子を見て、梅千代「いやだは新さん、お侍みたい」と呟いた。「お風呂にでも行ってくれば・・、松の湯はだめ、芸者の客が多いから、竹の湯もだめ、番台に美人の女将さんが座っているから。そうだ、みのりの湯がいい!あそこオバサンばかりだから」というやりとりに、オバサンたちは拍手喝采、客との「呼吸合わせ」も絶妙であった。新さん、「では、風呂に行って来よう。でも一つ約束、これからはお酒を飲んでくれるなよ、大事な体にさわるから」「わかったよ」と梅千代が送り出せば、颯爽とした旅姿の侍(見城たかし)登場。「御免!」と言って梅千代宅を訪れた。「わしは立花一馬という者、折り入って頼み事がある。何にも言わぬ、この家に居る新さんという若者と別れて貰いたい」。突然の申し出に驚いた梅千代、事情を聞けば、新さんは、実は青山伊織という名で、大名三千石・青山家の嫡男であった。大殿と衝突して家を出たが、今、大殿は病に倒れ重篤の身、このままではお家断絶、若君を連れ戻して跡目を継いで頂かねばならぬ由・・・・。「お断りします。・・・私のお腹には新さんの子が宿っております」「そうであったか、では、やむを得ぬ。この場を借りて切腹いたす。大殿に対して申し訳が立たない」「・・・待ってください!」梅千代の表情は一瞬に凍りついたが、しかし、あきらめなければならない・・・、しだいに、崩れ、大粒の涙が頬を伝う。背後には「なぜ巡り会うのかを 私達は何にも知らない いつめぐりあうのかを私達はいつもしらない ここにいたの ここにきたの…」(「糸」)という中島みゆきの名曲も流れて、愛の不条理が見事に描出された。一息あって、「わかりました。別れ話は私に任せてください」と一馬を帰す。やがて、帰宅した新さんに「心ならずも」の愛想づかし、あおっていた酒まで浴びせかけて絶縁した。「新さん、悔しかったら立派な男になって仕返しにおいで!」一年後、舞台は梅千代の(母の)里へと移る。村人たちは「お千代が子どもを連れて帰ってきた」という噂でもちきりだった。母(大倉扇雀)は外聞が悪いと困惑の表情だが、たご作(紅友也?)やおなべ(紅なるみ?)を相手に「与太話」をする余裕もあった。そこに、いきなり黒紋付きの侍が二人登場、家の奥にいたお千代を引きずり出して来る。お千代には芸者の風情は失せ、すっかり百姓女になりさがっていた。そこに豪華絢爛な衣装を纏った青山伊織があらわれ「過日の恨み晴らしに来た。手打ちにいたす!」居合わせた母は仰天したが、お千代「立派なお姿になりましたね、どうぞご存分に成敗してください」と手を合わせて瞑目する。母、必死に「お助けください」と懇願するところに、立花一馬「しばらくお待ちを!」と叫びながら登場、事の次第を若君に具申した。伊織、我に返って「・・・そうであったか。梅千代、すまないことをした。ヤヤは無事か」「はい、この通り」「よう、ここまで育ててくれた」と涙する。ややあって、「梅千代、わしと一緒に城に戻ってくれぬか」と誘えば、お千代、凜としていわく「ありがたいお話ですが、私が好きだったのは新さんという男です。青山伊織様には見知りはございません」。その清純な潔さが真珠のように輝いている。再び「「なぜ巡り会うのかを 私達は何にも知らない いつめぐりあうのかを私達はいつもしらない ここにいたの ここにきたの…」(「糸」)が流れるうちに舞台は閉幕となったが、この芝居の上演時間は50分、寸分の隙・無駄のない、文字通り「珠玉の名舞台」であった、と私は思う。とりわけ、総座長・紅大介の「女形」はお見事!、名優・見城たかしの武家姿と「五分に渡り合い」、女の情念を浮き彫りにする「実力」は半端ではない。容貌は「可愛らしく」「愛嬌たっぷり」だが、そこに秘められた情念は、あるときはコケティッシュ、あるときは鉄火肌、あるときは諦観、あるときは(女の)侠気へと曼荼羅のように変化する。まさに男優の「女形」でなければ描出できない景色・風情の連続に私の涙は止まらなかった。音響効果や脇役陣の彩りも添えられて、今日の舞台、「大衆演劇」の枠を大きく超えていたのではないだろうか。「紅劇団」一行様、久しぶりに、「鳥肌の立つ」舞台を観せてくれてありがとう、と感謝しつつ帰路に就いた次第である。



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