2023-05-19
劇団素描・「長谷川武弥劇団」・《芝居「下郎の首・槍供養」》
【長谷川武弥劇団】(座長・長谷川武弥)〈平成23年6月公演・小岩湯宴ランド〉
芝居の外題は「下郎の首・槍供養」。大衆演劇の定番で、筋書は単純。浅野家中の侍(座長・長谷川武弥)が、領主・内匠頭から頂戴した「命よりも大切な槍」を下男・比丘助(総座長・愛京花)に持たせて、旅の道中の出来事である。下男は慣れぬ旅とみえ、生爪を剥がして遅れ勝ち、見かねた侍は下男を茶屋で休ませ、一足先に小田原の宿へ・・・。「目印に旅笠を吊しておく。その宿屋に来るように」と言伝して退場した。少しのつもりが、旅の疲れか一眠りしてしまった下男、眼を覚ますとあわてて主人を追い掛ける。小田原に着いたものの、宿屋は多数、あちこちと探し歩き、ようやく玄関に旅笠が吊してある宿を見つけた。下男、よく調べもせずに上がり込み、運ばれてきた膳にまで箸をつけてしまった。しかし、そこは加賀百万石大名家中の侍が借り切った定宿、たちまち家来衆に囲まれ、「命よりも大切な槍」を取り上げられてしまった、という次第。下男、呆然として、主人の宿に到着、主人に一部始終を報告した。「そうか、わしがその侍に謝れば、槍を返してもらえるのだな。謝って済むことなら造作もないこと、なんべんでも頭を下げようぞ」と言い残して出かけていったのだが、しばらくして戻るなり、開口一番「あの槍は、くれてやった。心配するな。もう休め」、よく見ると額に傷まで負わされている。収まらないのは下男、「とんでもない粗相をしてしまった!。自分のために御主人様は、武士の面目丸つぶれ・・・。私の首を持って行き、槍を取り戻してクンロ・・・」などと泣き崩れながら、腹を突く。主人、「何てバカなことを!人間の命は一つだけ、かけがえのないものなのに・・・」と悔やむが、芝居の眼目は、あくまで「忠孝」、「比丘助よ、そこまでわしのことを想ってか。あっぱれな奴!、必ず仇は討ってやるぞ」。かくて、「下郎の首」もろともに仇討ちを果たし、槍を取り戻すというお話で、「たいそうよかった」と言いたいが、出来栄えは「今一歩」。舞台を見ているだけでは、御主人から「あの槍は、くれてやった。心配するな。もう休め」と言われた下郎が、どうしてまた、腹を突かなければならなかったのか。その「心の流れ」が呑み込めない。眼目「忠孝」の風情が「今一歩」感じられなかった。加えて、閉幕後、下郎・比丘助(の魂)が「颯爽」と再登場、御主人様と自分の首を追い掛けるといった演出は、かなり「無理筋」、観客が「余韻を楽しむ」邪魔になっても「ため」にはならない結果になったのではないか、と私は思う。愛京花の口上によれば、この芝居の作・演出は、特別出演・華月慎によるとのこと。もしかして、華月慎とは、あの「九州の玉三郎」「生きる博多人形」と評された荒城慎?だとすれば、その艶姿を、一目、舞台の上で観たかった。残念、無念の思いを噛みしめて帰路に就いた次第である。
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芝居の外題は「下郎の首・槍供養」。大衆演劇の定番で、筋書は単純。浅野家中の侍(座長・長谷川武弥)が、領主・内匠頭から頂戴した「命よりも大切な槍」を下男・比丘助(総座長・愛京花)に持たせて、旅の道中の出来事である。下男は慣れぬ旅とみえ、生爪を剥がして遅れ勝ち、見かねた侍は下男を茶屋で休ませ、一足先に小田原の宿へ・・・。「目印に旅笠を吊しておく。その宿屋に来るように」と言伝して退場した。少しのつもりが、旅の疲れか一眠りしてしまった下男、眼を覚ますとあわてて主人を追い掛ける。小田原に着いたものの、宿屋は多数、あちこちと探し歩き、ようやく玄関に旅笠が吊してある宿を見つけた。下男、よく調べもせずに上がり込み、運ばれてきた膳にまで箸をつけてしまった。しかし、そこは加賀百万石大名家中の侍が借り切った定宿、たちまち家来衆に囲まれ、「命よりも大切な槍」を取り上げられてしまった、という次第。下男、呆然として、主人の宿に到着、主人に一部始終を報告した。「そうか、わしがその侍に謝れば、槍を返してもらえるのだな。謝って済むことなら造作もないこと、なんべんでも頭を下げようぞ」と言い残して出かけていったのだが、しばらくして戻るなり、開口一番「あの槍は、くれてやった。心配するな。もう休め」、よく見ると額に傷まで負わされている。収まらないのは下男、「とんでもない粗相をしてしまった!。自分のために御主人様は、武士の面目丸つぶれ・・・。私の首を持って行き、槍を取り戻してクンロ・・・」などと泣き崩れながら、腹を突く。主人、「何てバカなことを!人間の命は一つだけ、かけがえのないものなのに・・・」と悔やむが、芝居の眼目は、あくまで「忠孝」、「比丘助よ、そこまでわしのことを想ってか。あっぱれな奴!、必ず仇は討ってやるぞ」。かくて、「下郎の首」もろともに仇討ちを果たし、槍を取り戻すというお話で、「たいそうよかった」と言いたいが、出来栄えは「今一歩」。舞台を見ているだけでは、御主人から「あの槍は、くれてやった。心配するな。もう休め」と言われた下郎が、どうしてまた、腹を突かなければならなかったのか。その「心の流れ」が呑み込めない。眼目「忠孝」の風情が「今一歩」感じられなかった。加えて、閉幕後、下郎・比丘助(の魂)が「颯爽」と再登場、御主人様と自分の首を追い掛けるといった演出は、かなり「無理筋」、観客が「余韻を楽しむ」邪魔になっても「ため」にはならない結果になったのではないか、と私は思う。愛京花の口上によれば、この芝居の作・演出は、特別出演・華月慎によるとのこと。もしかして、華月慎とは、あの「九州の玉三郎」「生きる博多人形」と評された荒城慎?だとすれば、その艶姿を、一目、舞台の上で観たかった。残念、無念の思いを噛みしめて帰路に就いた次第である。
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