META NAME="ROBOTS" CONTENT="NOINDEX,NOFOLLOW,NOARCHIVE" 脱「テレビ」宣言・大衆演劇への誘い 2022年11月04日
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2022-11-04

劇場界隈・《行田温泉茂美の湯、もさく座公演「鹿島順一劇団」》

【行田温泉茂美の湯・もさく座】(埼玉県行田市)
 JR高崎線・北鴻巣駅から送迎バスで10分、または吹上駅から路線バス・行田車庫行きで「産業道路」停留所下車、徒歩15分、「さきたま古墳群」の傍、忍川の畔にある。もさく座は、「源泉かけ流し」の名湯である行田温泉茂美の湯に併設されており、宿泊して観劇すれば名湯と名舞台が同時に楽しめる桃源郷である。浴室には、様々な浴槽が設けられ、それぞれ泉温が違う。自分の好みに合わせて適宜利用すれば、日頃の生活で傷ついた心身を、ほどよく癒してくれる。従業員は若者が多く、「気が回らない」物足りなさ、「手際の悪さ」はあっても、「別に悪気があってのことではない」と思えば、さほど気にはならない。劇場はこれまでの舞台付き大広間(いわゆる宴会場・二階)から、観劇専門の一室(約300人収容・一階)に移転、リニュアール・オープンしたとの由。暗闇の中で飲み食いしながら観劇するという「愚」を避けようとする、経営者の賢明な判断に拍手を送りたい。公演は「鹿島順一劇団」(座長・鹿島順一)。芝居の外題は、昼の部「忠治御用旅・雪の信濃路」、夜の部「噂の女」。二日替わりのプログラムで、初日、二日は「春木の女」と「会津の小鉄」(名張屋新蔵と仙吉)だったそうな。いずれも、劇団屈指の名狂言。さぞかし感動的な名場面、至芸の数々が展開されたことであろう。さて、私が見聞したのは「忠治御用旅」。赤城の山を追われた国定忠治(座長・鹿島順一)が、雪の信濃路を逃げていく。あまりの寒さに、思わず立ち寄った一件の居酒屋、そこの亭主はかつての子分(春大吉)、その女房(春日舞子)の兄(蛇々丸)は十手持ち、忠治を捕縛する役目を負っていた。兄と対抗する女衒の十手持ち(花道あきら)、土地のごろつき(梅之枝健)女衒の子分たち(三代目・虎順、赤胴誠)が必死に忠治を追いかけるが、「貫禄」が違う。その筋書き・台本通りに、座長・鹿島順一の舞台姿は「日本一」、一つ一つの所作、口跡は「珠玉」の「至芸」、とりわけ、御用旅の疲れにやつれた風情が、一子分との出会いで一変、しかしその子分が女房持ちと知るやいなや、すぐさま立ち去ろうとする「侠気」、ごろつき殺しの疑いをかけれれた子分の窮地を救うために「百姓姿」(三枚目)に豹変する「洒脱」、さらには、もう逃げ切れぬとさとったとき、兄の十手持ちの前に両手を差し出す「諦念」の風情を「ものの見事に」描出できるのである。加えて、子分、その女房、その兄との「絡み合い」は、心に染み渡る「人情芝居」そのもの、剣劇と人情劇(時には喜劇も)を同時に楽しむことができる「逸品」であった。十手持ちの蛇々丸が忠治の座長を「それとなく」「逃げのびさせる」やりとりは、「勧進帳」の「富樫」にも似て、大衆演劇の「至宝」と評しても過言ではない、と私は思う。
 夜の部「噂の女」、客の数は半減したが、「そんなことにはおかまいなく」(座長の気分が乗れば)全力投球で舞台に臨むのがこの劇団の特長である。今回の舞台も、座長、「しっちゃかめっちゃか」(一見、型破り、実は計算され尽くした)の奮闘公演、百二十パーセント「完璧な」筋書き・展開(どこのセリフ回しも端折ることなく)が具現化されていた。舞台は「水物」、その劇場、客筋によって、出来映えは「千変万化」するのだが、その変化がを「つねに前進・向上」したものしようと努める(ころんでもただでは起きない)心構えが劇団員一人一人に「徹底して」染みこんでいるように、私は感じる。      以下は、前回、私が見聞した「噂の女」の感想である。
 〈夜の部の芝居は「噂の女」。主演・春日舞子、共演・鹿島順一。配役は、「噂の女」・お千代(春日舞子)、その父(蛇々丸)、弟(花道あきら)、弟の嫁(春大吉)、嫁の父(梅乃枝健)、お千代の幼友達・まんちゃん(座長・鹿島順一)、村人A(三代目・虎順)、B(金太郎)、C(赤胴誠・新人)、D(生田あつみ)という面々である。時代は、明治以後、五百円が、今の百万円程度であった頃だろうか。ある村に、「噂の女」が帰ってくる。まんちゃんは「駅まで迎えに行こう」と、村人を誘うが、誰も応じない。「お千代は、十年前、村に来た旅役者と出奔し、その後、東京・浅草の淫売屋で女郎をしているというではないか。そんな不潔な女とは関わりたくない」と言う。まんちゃん「そんなことは関係ない。みんな同じこの村の仲間ではないか」村人「とんでもない。そんな女に関わるなら、お前は村八分だ」まんちゃん「村八分、結構!もともと、俺なんかは村では余計物、俺は一人でもお千代タンを迎えに行くぞ」、村人「勝手にしろ。お前はいくつになっても、足りんやっちゃ、この大馬鹿もの!」  
 やがて汽笛の響きと共に汽車が到着、まんちゃんはお千代の荷物を持って大喜び、一足先に、お千代の父宅に持参する。やがて、東京暮らしですっかり垢抜けたお千代も帰宅、父はお千代が好きだった「揚げ豆腐」を買いに出て行った。後に残ったのは、まんちゃんとお千代の二人きり、まぶしい太陽でも見るようにまんちゃんが言う。「お千代タン、よう帰ってきてくれたなあ。オレ、ずうっと待っていたんだ」「どうして?」「だって、ずっと前から、オレ、お千代タンのこと好きだったんだもん。」「あんた、あたしが浅草でどんな商売しているか知ってるの?」「知ってるよ。男さんを喜ばす仕事だろ。みんなは、汚い、穢らわしいと言うけど、オレはそう思わない。お千代タンは、人を騙したり、傷つけたりしていない。人を喜ばす大切な仕事をしていると思うとる」「ほんとにそう思うの?」「ああ、本当だ。できれば、お千代タンと一緒に暮らしたいんだ、キーミーハ、コーコーローノ、ツーマダーカラ・・・」思わず絶句するお千代。よく見ると泣いている。「アンタ、泣イイテンノネ、オレまた何か、まずいこと言っちゃったんかな?」「そうじゃないのよ、嬉しくて涙が止まらないの」「フーン?」しばらく沈黙、意を決したようにお千代「まんちゃん!あたし、まんちゃんのお嫁さんになる!」動転するまんちゃん「何だって?今、なんて言った?」「あたし、まんちゃんのお嫁さんにしてくれる?」「そうか、オレのお嫁さんになってくれるんか。へーえ、言ってみるもんだなあ」かくて、二人の婚約は成立した。そうとなったら善は急げだ。こんな村などおさらばして、東京へ行こう。まんちゃんは小躍りして旅支度のため退場。そこへ父、帰宅、弟夫婦も野良仕事から戻ってきた。しかし、二人の表情は固い。土産を手渡そうとするお千代に弟は言い放つ。「姉ちゃん、何で帰ってきたのや。村の人たちはみんな言ってる。あんな穢らわしい女を村に入れることはできない。もし居続けるようなことがあったら村八分や。おれたち村八分になってしまうんや。姉ちゃん、それでもいいのか。はよう、この家から出て行ってくれ!」父が激高した。「お前、姉ちゃんに向かって何てことを言うんだ」弟も反駁。「隠居の身で大きな口たたくな。今はおれこそが、家の大黒柱、それに姉ちゃんは十年前、おれが病気で苦しんでいたとき、旅役者と駆け落ちしたんじゃないか!」「何だって、もういっぺん言ってみろ」「ああ何度でも言ってやる。姉ちゃんはおれたちを見捨てて、淫売女になり果てたんだ。そんな女をこの家に置いとくわけにはいかない」「よーし、お前がそこまで言うんなら、わしも黙っているわけにはいかない!」必死で止めようとするお千代を制して、父も言う。「おまえが病気の時、姉ちゃんが出て行ったのはなあ、お前が町の病院で治してもらうお金のためや。姉ちゃんは、自分の身を売ってお前の治療代を作ったんだぞ!、病気が治ったのは姉ちゃんのおかげ、それを今まで黙っていたのは、お前を心配させないためや」「・・・・」絶句する弟、「何だって!何で、今頃そんなこと言い出すんや。もう遅いわい」そこへ、弟嫁の父、登場。「やあ、お千代さん。よう帰ってきたなあ・・・。サチヨ(嫁)、もうお姉さんに御挨拶はすんだのか?」だが、その場の様子がおかしい。一同の沈痛な表情を見とって自分も沈痛になった。「やあ、困った、困った。実に困った」、「何が?」と問いかける弟に「実はな、ある人の借金の保証人になったばっかりに、五百円という大金を負わされてしまったんだ。何とかならないだろうか?」「えっ?五百円?そんなこと言われたって、見ての通りの貧乏暮らし、そんな金どこを探したってあるはずがない」弱気になる弟に、隠居の父がつっかかる。「お前、さっきなんてほざいた。この家の大黒柱じゃあなかったんか」やりとりを黙って聞いていたお千代が口を開いた。「おじさん。五百円でいいの?ここに持っているから、これを使って。これまで、身を粉にして貯めたお金よ。家に帰ってみんなの役に立てればと思って持ってきたの。私が使ったってどうせ『死に金』、おじさん達に役立ててもらえば『生きたお金』になるじゃないの」一同、呆然、弟夫婦は土下座して声が出ない。肩が小刻みに震えている。お千代、キッとして「もう、いいの。このまま浅草に帰るわ。また、あそこでもい一回、頑張って生きていこうと思います」、「待ってださい」と引き止める弟夫婦、その両手をやさしく握りながら、「あっ、そうだ!忘れていた。お父さん、あたし好きな人ができたの。あたしその人のお嫁さんになるの!」一同、驚愕。「えっ?誰の?」お千代、涼やかに、「まんちゃんよ!」すっかり、旅支度を整えたまんちゃん、踊るように再登場、舞台も客席も、笑顔の花が咲き乱れる。まんちゃん「まあ、そういうことで、お父上、今後ともどうぞよろしくお願いいたします」弟嫁の父、そっとお千代に近づき「やあ、めでたい、めでたい、そういうことなら、これは私からのお祝いだ」さっきの五百円を手渡そうとする。「だって、おじさん!これは借金の返済に使うお金・・・」「なあに、心配ご無用。さっきの話は私の作り話、一芝居打ったのさ!」舞台に流れ出す、前川清の「噂の女」、まんちゃんとお千代、花道で颯爽と見得を切る。さっと振りかざした相合い傘の骨はボロボロ、破れガサがことのほか「絵」になる幕切れであった。「襤褸は着てても、心は錦、どんな花より綺麗だぜ、若いときゃ二度ない、どんとやれ、男なら、人のやれないことをやれ」、まんちゃんの心中を察して、私の心も洗われた。
 大衆演劇に共通する眼目は、「勧善懲悪」「義理人情」だが、もう一つ「人権尊重」という主題が秘められていることを見落としてはならない。「村八分」という差別観に敢然と立ち向った「まんちゃん」(余計者・与太郎)とお千代(賤業者)の行く末は?、それを決めるのは、他ならぬ私たち一人ひとりなのではないだろうか。

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