META NAME="ROBOTS" CONTENT="NOINDEX,NOFOLLOW,NOARCHIVE" 脱「テレビ」宣言・大衆演劇への誘い 劇場界隈・「浪速クラブ」(大阪・新世界)
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2022-11-10

劇場界隈・「浪速クラブ」(大阪・新世界)

ある老舗の「常打ち小屋」(実は「浪速クラブ」・大阪新世界)、その日、客席は開演一時間前から「大入り」が予想された。花形役者の誕生日とあって入場者全員に粗品(役者の芸名を染め抜いた手拭い)がプレゼントされるからだ。座席は予約で満員、当日席はすべて補助席という状態であった。しかし、小屋の若い衆(従業員)は手慣れたもので、次から次に入場してくる客を、手際よく補助席に案内していく。そんな時、客はもう「見やすい席」をあきらめなければならないのだが、黙って応じるとは限らない。私は上手の壁際にある三人掛けの長椅子に案内された。その隣に七十歳代とおぼしき(しかし元気のいい、血気盛んな)女性客二人もまた案内されてきた。客「にいちゃん、ここ疲れるわ、他に席ないのんけ?」若い衆「あっちは、予約席ですねん、ここで我慢してもらえませんか」客は「しゃーないな」と不満たらたらという表情で舌打ちした。入場者はさらに増え続け、通路に丸椅子が並べられた。件の女性客はそれをめざとく目にすると、「なんや、あっちの方がええやないか。あっちに移ろ、移ろ・・・」と言って、そそくさと席を立ち、移動してしまった。そこへ若い衆がやってきた。「ちょっとお客さん、待ってくれまへんか。そこは、外で並んでいやはるお客さんの席ですねん」「ええやないか、わてらが先に来てるんやから・・・。金(追加料金)はらえば文句ないやろ」「ですから、ちょっと待っててくれまへんか。席が空いたら(確保できる見通しがついたら)案内しますよってに・・・」女性客は渋々、私の隣の席に戻ってきた。「なんや、えらそうに・・・。客をなんだと思っているんや」しかし、若い衆は冷静である。自分のもくろみ通りに続々と入場して来る客を丸椅子に案内していく。一段落ついたあと、若い衆が女性客の所へやってきた。「お客さん、お待たせしました。席つくりましたので移ってもらえますか」こわばっていた女性客の表情が多少ほころんだ。「なんや、移ってもええんか」「はいどうぞ、お二人さんで二百円いただきます」若い衆の采配に対する女性客の不満が吹っ飛び、「今日はよかった」という感動で帰路につけるかどうか、それはひとえに、「劇団」(「花吹雪」)の実力にかかっていることを、私は思い知った。(そのとおりの結果になったことはいうまでもない)
 もう一人、並べられた補助席の丸椅子に座って、なにやらぶつぶつ、しきりに周りの客に話しかけている中年の男性客がいた。たえず体を動かし落ち着きがない。しばらく周りを見回していたが、ついに我慢ができなくなったのか、立ち上がると木戸口の方へ行き、若い衆に談判し始めた。しばらくすると、こわばった表情で戻ってきた。目が据わっている。よく見ると、粗品の手拭いを持っている。(そうか、入場の時に配られた粗品をもらいそこなったんだ)私が納得していると、その男性客は、いきなり手拭いを周囲の椅子の背に叩きつけた。(よほど腹に据えかねたのだろう)一瞬、周囲の客が驚いて視線が集中した時、すかさず若い衆が飛んできた。「お客さん、暴れるんだったら、出て行ってもらいます」男性客は、少し抵抗しただけで小屋の外に「つまみ出されて」しまった。木戸口の外では男性客の怒鳴り声が聞こえていたが、客席はすぐに落ち着きを取り戻した。「なんや、酔っぱらいか。他の客に迷惑かけたらあかんわ」という声があちこちから聞こえた。開演までの一時間、私は退屈することなく「観客の芝居」を十分に堪能できたのである。
人情灯台通天閣人情灯台通天閣
(2001/01/17)
原田ゆかり

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まとめteみた【脱「テレビ」宣言・大衆演劇への誘い】

ある老舗の「常打ち小屋」(実は「浪速クラブ」・大阪新世界)、その日、客席は開演一時間前から「大入り」が予想された。花形役者の誕生日とあって入場者全員に粗品(役者の芸名を染め抜いた手拭い)がプレゼントされるからだ。座席は予約で満員、当日席はすべて補助席と...

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