2023-12-30
劇団素描・「森川劇団」・《三代目森川長二郎、絶品の「三枚目」》
【森川劇団】(座長・森川凜太郎)〈平成20年11月公演・浅草木馬館〉
前回、私はこの劇団について以下のように書いた。〈役者の「個性」が「味」として定着しており、その場その場に応じて、いかようにもその「味」を生かすことができる「有力者」の集団である。座長を中心に、しかし、場合によっては「脇役だけでも」芝居ができるという「強み」(伝統)が、私には感じられた。舞踊ショーで見せた、森川竜二の女形「北の蛍」(唄・森進一)は絶品、「至芸」の域に達している。その他、全員の舞台も「水準以上」、壺にはまれば(結束が結実化すれば)、最高水準の「芝居」「舞踊」が実現できるだろう〉今回の舞台、芝居の外題は「兄妹星」(昼の部)と「浮浪者の母」(夜の部)、いずれも「涙と笑いの人情芝居」だが、どちらかといえば「兄妹星」は悲劇、「浮浪者の母」は喜劇調で、両者は私が感じていたとおり、役者の「個性」(味)が活かされた(壺にはまった)最高水準の「出来栄え」であった。中でも出色だったのは、森川竹之介、「兄妹星」では、盗賊一味の「ちょい役」だったが、そのメーキャップ、立ち姿、所作、口跡が、なんとも「魅力的」(個性的)で、舞台の景色を際だたせるのに十分であった。一方、「浮浪者の母」では、心優しい慈母の「女形」、その風情が堂に入っていて、頼もしい。ともすれば、座長の「脇役」として「見落とされがち」な立場に感じられたが、とんでもない、彼こそ「いぶし銀のように」光り輝く存在であることを、今さらながら思い知らされた次第である。劇団のキャッチフレーズには〈二枚目 三枚目、女形、脇役、老け役。すべてをオールマイティにこなせる役者を目標に、全員があらゆる役を演じ分けて見せてくれます〉とあるが、その言辞に偽りはなかった。舞台に立つ役者全員が個性的な「実力者」であり、それぞれの役割を「のびのびと」しかも「確実に」果たしていることが素晴らしい。二枚目でありながら、ふっととぼける竜二、憎めない敵役の竜馬、生一本な風情を醸し出す梅之介、艶やかで、可愛らしい女優陣、そこに芸達者の竹之介、と座長(時としては凜太郎)が加わるのだから、まさに「盤石の態勢」といえるだろう。三代目・森川長二郎の「切り札」は「汚れ役」「三枚目」、「浮浪者の母」では「藤山寛美もどき」の風情で「子持ち浮浪者」役を見事に演じきった。とりわけ、「母親」役(竹之介)との「絡み具合」、「赤子人形」の扱い方は「絶品」で、斯界の「喜劇役者」としては屈指の実力者である、と私は思う。
敵役の竜馬、三枚目の座長の「二枚看板で」「勝負を賭ける」、背後には「花も実もある」脇役陣が揃って控えているのだから「心配御無用、いつでもどこでも、老舗劇団 の本領を発揮してもらいたい、と念じつつ帰路についた。
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前回、私はこの劇団について以下のように書いた。〈役者の「個性」が「味」として定着しており、その場その場に応じて、いかようにもその「味」を生かすことができる「有力者」の集団である。座長を中心に、しかし、場合によっては「脇役だけでも」芝居ができるという「強み」(伝統)が、私には感じられた。舞踊ショーで見せた、森川竜二の女形「北の蛍」(唄・森進一)は絶品、「至芸」の域に達している。その他、全員の舞台も「水準以上」、壺にはまれば(結束が結実化すれば)、最高水準の「芝居」「舞踊」が実現できるだろう〉今回の舞台、芝居の外題は「兄妹星」(昼の部)と「浮浪者の母」(夜の部)、いずれも「涙と笑いの人情芝居」だが、どちらかといえば「兄妹星」は悲劇、「浮浪者の母」は喜劇調で、両者は私が感じていたとおり、役者の「個性」(味)が活かされた(壺にはまった)最高水準の「出来栄え」であった。中でも出色だったのは、森川竹之介、「兄妹星」では、盗賊一味の「ちょい役」だったが、そのメーキャップ、立ち姿、所作、口跡が、なんとも「魅力的」(個性的)で、舞台の景色を際だたせるのに十分であった。一方、「浮浪者の母」では、心優しい慈母の「女形」、その風情が堂に入っていて、頼もしい。ともすれば、座長の「脇役」として「見落とされがち」な立場に感じられたが、とんでもない、彼こそ「いぶし銀のように」光り輝く存在であることを、今さらながら思い知らされた次第である。劇団のキャッチフレーズには〈二枚目 三枚目、女形、脇役、老け役。すべてをオールマイティにこなせる役者を目標に、全員があらゆる役を演じ分けて見せてくれます〉とあるが、その言辞に偽りはなかった。舞台に立つ役者全員が個性的な「実力者」であり、それぞれの役割を「のびのびと」しかも「確実に」果たしていることが素晴らしい。二枚目でありながら、ふっととぼける竜二、憎めない敵役の竜馬、生一本な風情を醸し出す梅之介、艶やかで、可愛らしい女優陣、そこに芸達者の竹之介、と座長(時としては凜太郎)が加わるのだから、まさに「盤石の態勢」といえるだろう。三代目・森川長二郎の「切り札」は「汚れ役」「三枚目」、「浮浪者の母」では「藤山寛美もどき」の風情で「子持ち浮浪者」役を見事に演じきった。とりわけ、「母親」役(竹之介)との「絡み具合」、「赤子人形」の扱い方は「絶品」で、斯界の「喜劇役者」としては屈指の実力者である、と私は思う。
敵役の竜馬、三枚目の座長の「二枚看板で」「勝負を賭ける」、背後には「花も実もある」脇役陣が揃って控えているのだから「心配御無用、いつでもどこでも、老舗劇団 の本領を発揮してもらいたい、と念じつつ帰路についた。
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